医療業界はSDGsに積極的!地域医療の課題とSDGsの関連も

医療業界の課題は、SDGsの目標と重なっている部分が多く、SDGs達成は喫緊の問題でもあります。医療業界とは、医療行為に携わる病院や診療所、製薬会社、医療機器メーカー、医療関連サービスなどのことです。そのため、多くの医療業界が積極的に取り組んでいます。なかでも、SDGsの目標3である「すべての人に健康と福祉を」は、医療業界にとって重要な課題となっています。また、地域医療の課題もSDGsの目標達成と同じです。本記事では、医療業界が積極的にSDGsに取り組んでいる理由や具体的な取り組み、地域医療の課題などを紹介します。

医療業界はSDGsに積極的

近年では医療業界の多くの機関が、SDGsに対して積極的に取り組んでいます。また、多くの医療機関や製薬会社、医療機器メーカーなどが、SDGsへの取り組みをWebサイトに掲載しており、ブランディング効果を発揮しているケースも少なくありません。

その要因として医療分野で、環境や働き方改革、地域医療への貢献などに取り組んでいるケースが増えていることが挙げられます。しかし、医療業界のWebサイトで、SDGsへの取り組みを記載していないとしても、その医療業界がSDGsに無関心なわけではありません。全世界的にSDGsへの取り組みが広がっている現在において、医療業界にとってSDGsは他人事ではないからです。

先に述べたように、そもそも医療業界全体として、持続可能な発展には課題を抱えています。その課題を解決することがSDGsの取り組みと直結していることを理解した医療業界が、SDGsに対して積極的に取り組んでいるのです。

なぜ医療業界はSDGsに積極的なのか

医療業界が、SDGsに対して積極的に取り組んでいるのは、SDGsの17の目標のなかでも、目標3である「全ての人に健康と福祉を」に直結するからです。また、SDGsの17の目標を全て達成させるためには、目標3の達成は不可欠な要素でもあります。

SDGsの目標が達成できるかどうかは、医療業界の取り組みが左右するといっても過言でありません。ここでは、3つの項目を解説しながら、医療業界がSDGsに積極的に取り組まなければならない理由を紹介します。

健康と福祉はすべての人の権利であるから

SDGsの目標3の「すべての人に健康と福祉を」は、これを実現させなければならない概念としてUHC(Universal Health Coverage)があげられています。UHCの概念は、「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを支払い可能な費用で受けられること」であり、全ての人に保障されるべき権利です。

この概念は素晴らしいのですが、現実には国や地域によって充分な医療を受けられていない人が少なくありません。国内においても、経済状況により医療格差や医療圏ごとに医療の質や密度の違いによる格差、診療科や地域の医師不足などの問題が顕在化しています。

このような状態の中で、「すべての人に健康と福祉を」を達成し、UHCの概念を守ることは、医療業界の使命といえるでしょう。医療業界が、SDGsの根幹である「誰一人取り残さずに」の精神で、SDGsの目標3の達成とUHCを提供することを宣言するためにも、医療業界はSDGsに積極的に取り組んでいるのです。

健康でなければ開発を進められないから

人々が健康でなければ、SDGsのサスティナブルな開発は進められないでしょう。人々の健康とSDGsの17の目標には大きな関連性があります。SDGsのDであるDevelopmentには、開発だけではなく発展や発達という意味も含まれているのです。

これらに人間を合わせて考察すれば、developmentは人々が自らの力を発揮することという解釈が可能です。人々は、健康でなければ自らの力を発揮できません。すなわち、医療業界がSDGsに対して積極的に取り組み、人々の健康を守ることが、持続可能な開発を進める原動力となるのです。

SDGsは医療業界の課題でもあるから

医療業界が抱える課題や問題は、SDGsの目標の達成により解決できることはすでに述べました。医療業界の課題のなかでも、もっとも重要なのは労働問題です。医療業界では、不規則長時間や厳しい労働環境が多いため、深刻な人手不足が蔓延しています。また、過疎地域の医療格差も社会的な大きな問題です。

この問題解決の道筋も、一部でのみ見えてきているのが現状です。これらの解決のためには、少人数で負担のかからない働き方の構築は最優先事項であり、SDGsの目標とも重なります。また、医療廃棄物の問題や気候変動が人の体に与える影響など、SDGsの目標は医療業界の存続にも大きな影響を及ぼすものといえるでしょう。これらの要因からも、医療業界はSDGsに積極的に関わらなくてはならないのです。

医療が取り組むSDGs(代表例:日本赤十字社の取り組み)

名古屋市 中村日赤病院

日本赤十字病院は知名度も高く、先端医療や先進医療が充実しています。また、国内に数多くの拠点があり、SDGsへの医療の取り組みを知るのにも適している施設です。なかでも、SDGsへの取り組みに対して、模範となる取り組みをしている愛知県の日本赤十字病院を取り上げて紹介します。

ただし、そのすべてを紹介することは難しいため、代表的なものを選んで紹介しますが、詳細を知りたい人は下記のテキストリンクで確認してください。

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院のSDGsへの取り組み

専門性の高い医療を提供

800床以上の病床を持つ病院は、地域の中核の病院です。このような病院では、がん診療や高難度の手術など、さまざまな分野で専門性の高い医療を提供しています。このような病院があるからこそ、人々が安心して医療を受けられる要因となるのです。これは、SDGsの目標3と目標11に貢献しています。

365日受入可能な救急体制

地域医療の要として救急医療の受け入れ体制は、365日24時間救急患者を受け入れることに尽力しています。このような医療体制の構築は簡単ではありませんが、地域医療に不可欠な要素です。これは、SDGsの目標3と目標11に貢献しています。

病気予防のための市民公開講座

SDGsの目標3である「すべての人に健康と福祉を」を達成するためには、病気予防が不可欠です。そのために、多くの人々に向けた講座を多数開催しています。健康教室やがん予防講座、母親学級、メタボ予防講座などを開催。病気の治療だけではなく、予防や日々の健康増進に役立つ情報を発信しています。これは、SDGsの目標3と目標11に貢献しているといえるでしょう。

国内災害救護に貢献

日本はそもそも地震大国であり、近年の地球温暖化による自然災害の増加が顕著となっています。医療の使命でもある災害救護活動に、積極的に取り組むことは、SDGsにとっても重要です。救護班を多数編成し災害が起こった際は、全国の被災地に駆けつけ救護活動を展開しています。これは、SDGsの目標3に貢献している活動です。

国際救援活動にも貢献

SDGsの目標を達成するためには、人道的な理念に基づき、世界中の災害救護や人道支援をサポートしなければなりません。国際医療救護拠点病院の一つである日本赤十字社は、研修を積んだ医療従事者を派遣要員として国際救護活動に派遣し、世界中で活躍しています。これは、SDGsの目標3と目標10に貢献しています。

ジェンダーギャップのない登用制度

医療業界として、SDGsの目標を達成させるためには、ジェンダーギャップがない登用制度やキャリアアップの機会が不可欠です。本院では、役職者の登用についてもそれらの差別は一切ありません。これは、SDGsの目標5と目標8に貢献しています。

地域医療とSDGsの関連性

地域医療には、SDGsへの取り組みが不可欠です。地域医療の確保や質の向上、地域医療連携の推進などは喫緊の課題といえるでしょう。ここでは、地域医療に不可欠な課題とSDGsの関連を解説します。

地域医療とSDGsに不可欠な課題

地域医療の課題とSDGsの目標達成は、医療業界とSDGsの関連性と同じく切り離せないものです。まずは、地域医療の課題を洗い出すことから始めましょう。

  • 医療に困っている地域を支援する体制の構築
  • 質の高い医療を提供するための人材教育
  • ジェンダーギャップのない登用制度の構築
  • 電子化とペーパーレス化による職員の労働負荷の軽減
  • 地域医療の要である総合医の養成
  • 地域住民に密着した医療の提供
  • 障害者の積極的な雇用

これらの課題の解消が、SDGsへの貢献につながります。

サスティナブルの地域医療のために医療連携の推進

サスティナブル(持続可能な)地域医療のためには、病院や診療所、在宅支援診療所などが連携が必要です。そのためには、患者が切れ目ない医療を受けられるネットワークを作らなければなりません。医療機関の効率をあげて、必要な人が適切な医療を提供できるシステムを作ることが求められています。

地域医療を持続させるための課題

少子高齢化、人口減少による医師不足や医師の偏在は地域医療の大きな課題です。地域によっては、医療機関の閉鎖数の増加も大きな課題となっています。また、医療機関の間の連携の難しさも課題です。

SDGsに取り組む地域医療の事例

地域医療の課題を踏まえて、各医療機関がSDGsに取り組んでいる事例が少なくありません。ここでは、代表的な事例を紹介します。

東京北医療センターのSDGsへの取り組み

SDGs達成に向け、組織全体で取り組みを展開しているのが特徴です。環境・社会・経済のサステナビリティにおける重要な課題解決に貢献し、人類全体に価値をもたらすイノベーション創出の実現を目指しています。特に力を入れているSDGsの目標は3・5・8・10・11・12・13・15・16です。

横須賀市立総合医療センターのSDGsへの取り組み

SDGsは、先進国自身が取り組むユニバーサルなものと捉えています。SDGsに対して積極的に取り組んでおり、17の目標全てに力をいれているのが大きな特徴です。

社会福祉法人恩賜財団済生会のSDGs取り組み

SDGsの17の目標に密接に関連し積極的に取り組んでいるものと、間接的に関連しているものがあります。密接に関連し取り組んでいる目標は1・3・5・7・8・11・12・13です。

まとめ

医療業界の課題は、SDGsの目標と密接につながっているケースが少なくありません。そのため、医療業界全体が、SDGsに対して積極的に取り組んでいます。なかでも、SDGsの目標3の「すべての人に健康と福祉を」は、医療業界がなさなければならない使命といえるでしょう。

また、世界中の人が「持続可能な開発」に携わるためには、健康でなければなりません。その健康を担保するのが医療業界であり、これも使命といえます。医療業界は、SDGsの目標達成のために、多くの医療関係者や機関がさまざまな取り組みを進めています。

そのなかで、スポットをあてなければならないのが地域医療です。地域医療もまた、その課題とSDGsの目標が密接につながっています。地域医療の課題改善は、医療業界のみでは難しいでしょう。SDGsは、誰一人取り残さないことが根幹であり、誰もがSDGsに参加する必要性があります。地域医療には、行政や地域住民の積極的な関わりも欠かせない要素です。

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