生物濃縮とは?仕組みや影響についてわかりやすく解説

生物濃縮は、自然界における食物連鎖のなかで生じる現象です。人間も自然界から食物を得ているため、健康状態に影響を与え得ることもあります。とくに、有名なのは、有機水銀による水俣病などの公害の発生です。本記事では、生物濃縮について詳しく解説します。

生物濃縮とは?

生物濃縮とは、特定の物質が体内に蓄積されて濃縮されてしまう現象です。本来体内に取り込んだ物質が代謝によって体外に排出されることなく、体内にとどまりどんどん溜まっていってしまいます。

とくに上位の捕食者になってくるとより、堆積した物質の濃度が高くなっていきます。なぜなら、体に特定の物質をため込んだ下位の生物を多く捕食することによって、捕食した生物のため込んだ物質を体内に取り入れ、より蓄積させていくからです。

下位の生物がため込んでいる量は少なくても、多く捕食すればそれだけ多くの物質をため込むことになってしまいます。体に溜まっていくのは、主に水に溶けにくい物質であったり、分解されにくい物質です。

日本での現状

かつては日本でも生物濃縮のため、公害が発生していましたが、現状ではそのようなことはありません。なぜなら、かつて生物濃縮による公害が発生したときに法整備がされ、川に工場からの産業排水が流れることが規制されたからです。

また、生物の体内に蓄積される可能性が高い有害物質であるDDTやBHCなどといった薬品に関しても、使用が禁止されました。そのため、日本では現状、生物濃縮による大規模な被害は起きていません。

代表的な事例である「水俣病」

日本での生物濃縮による代表的な事例は、熊本県で発生した水俣病です。水俣湾周辺の住民に運動機能障害や視覚・聴覚に障害があらわれたもので、原因はメチル水銀の摂取でした。

メチル水銀は有害物質で、摂取すると脳や神経をマヒさせてしまいます。普段から、地元でとれる魚をよく食べていた住民が病気にかかりました。

化学工場から流れる工場排水中に含まれるメチル水銀を魚が体内に取り込んで、生物濃縮したために、その魚を食べることでメチル水銀を体内に取り込んでしまったからです。最初の患者が発症してからどんどん患者が増え、最終的に50人以上が発症しました。

世界での取り組み「POPs条約」

POPs条約は、2004年に結ばれた「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の略です。この条約で定められているPOPsは、有害な汚染物質であり、条約の加盟国はPOPsを使った製品の使用制限や製造中止などに務めることになりました。

2004年当初には50か国程度だった加盟国も、16年後の2020年には181か国まで増えました。そのため、世界規模でのPOPs規制ができているといっても過言ではないでしょう。POPs条約の概要は、以下の通りです。

「POPs条約とは、 環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDT等の残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の、製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定している条約です。

日本など条約を締結している加盟国は、対象となっている物質について、各国がそれぞれ条約を担保できるように国内の諸法令で規制することになっています。

対象物質については、残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)において議論されたのち、締約国会議(COP)において決定されます。」

経済産業省ホームページ

【具体例】生物濃縮の仕組み

生物濃縮の仕組みとは、生物が有害物質を取り込むことで、体の外に排出することも分解することもできずにため込んでしまう仕組みのことです。特定の物質は体外に排出されにくいだけではなく、タンパク質や脂肪と結びつきやすい性質を持っています。

そういった物質は、食物連鎖上位にいる生物に進むごとに、濃縮されて行ってしまい、これを生物濃縮と呼びます。有名なところでは、ふぐ毒や貝毒が生物濃縮といえるでしょう。生物濃縮が進むと、健康に慢性的な害が出ることが多くあるため、注意が必要です。

①ふぐ毒

ふぐ毒はテトロドトキシンと呼ばれる神経毒を持っていることで有名で、わずかな量でも致死量になる危険な毒です。そんなふぐ毒は、実は生物濃縮によってできあがったと考えられています。

もともと、テトロドトキシンは海の細菌によって生成されているものを他の生き物が食べ、その生き物の中で濃縮されます。

さらにその生き物をふぐが捕食することによって、ふぐの中で濃度の濃いテトロドトキシンが生物濃縮されているのです。そのため、毒のないエサを与えることによって、ふぐが無毒になることもあります。

②貝毒

貝毒もまた、生物濃縮であるといえるでしょう。貝毒は、植物プランクトンが持つサキシトシンという毒が濃縮されたものであると考えられています。毒をもつ植物プランクトンを食べ続けることによって体内で生物濃縮が起こり、その貝を食べることによって舌がしびれたり呼吸困難に陥ったりします。

生物濃縮の人体への影響

生物濃縮の、人体への影響にはどのようなものがあるのでしょうか。かつての水俣病を見るとわかりますが、脳や神経などに作用して、さまざまな健康被害を引き起こします。

工場排水中のメチル水銀は規制されてほぼなくなりましたが、近年ではマイクロプラスチックが問題となっています。なぜなら、マイクロプラスチックもまた生物濃縮を引き起こす物質と見られているからです。

生物濃縮の環境への影響

生物濃縮は、人体だけでなく環境への影響もあります。生物濃縮を引き起こす有害物質や汚染物質は、環境を破壊してしまう危険があります。

かつては誰もが当たり前だと感じていた工場の排水や、農薬の使用も生物濃縮を引き起こすだけでなく、公害や環境破壊を引き起こす一因です。生物濃縮や環境破壊を引き起こす可能性が高い物質について、詳しくみていきましょう。

ダイオキシン

ダイオキシンは、ダイオキシン類といって単一の物質ではありません。ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンやコプラナーポリ塩化ビフェニルなどの総称であり、毒性もそれぞれ違います。

約200種類あるダイオキシン類の中で、毒性が認められているのは、わずか29種類程度です。これらの物質は、自然環境に溶け込むことなく土壌や水中に長く残留してしまいます。また、食物連鎖を通じて生物濃縮することによって、健康に害を与えるようになるでしょう。

ダイオキシンの毒に対する動物実験なども行われていて、発がん性・生殖毒性・免疫毒性・神経毒性などがあることもわかっています。

ダイオキシンが発生する原因としては、産業廃棄物の焼却や塩素系農薬合成時の副産物としてが多くあります。意図して発生させているわけではありませんが、健康に害があることもまた、事実です。

PCB

PCBは、カネクロールのことです。また、カネクロールが過熱によって変化することで、ポリ塩化ジベンゾフランなどの物質になります。

かつてPCBの大量摂取事故としてカネミ油症事件があり、1800名以上もの中毒患者を出しました。とはいえ、PCBは一過的摂取であればそこまで大きな影響はありません。

ただし、海外では魚やエビからPCBの生物濃縮が見つかる例も多く、恒常的摂取に関しては明確な回答は得られていないものの健康に影響がないとはいい切れません。

とくにへその緒や母乳から胎児や乳児にPCBが移る可能性があるとも考えられているため、妊娠している女性は食べ物には気を付ける必要があるでしょう。

奇形や個体数について

PCB類やダイオキシン類などが生物に濃縮されることによって、奇形で生まれたり、個体数が減少したりといったことが起こります。

世界各地からそういった現象は何件も報告がされており、土の中や水などに溶け込んだPCBやダイオキシンによるものとされています。なぜなら、これらの物質は濃度が低くても体内に取り込まれて特定の臓器に蓄積されてしまうからです。

まとめ

生物濃縮は、人体の健康だけでなく、環境にも影響を与え、生態系を壊してしまう危険があります。そのため、汚染物質や有害物質を使わないようにすることが大切です。

実際に、日本では工業排水の垂れ流しに対する規制や、有害な物質を含む農薬の使用禁止なども行われています。生物濃縮は世界中で大きな問題となっているので、この機会にぜひ興味を持ってできることから始めてみましょう。

家庭でも、環境に配慮した製品を選んだり、自治体のルールを守ってゴミ捨てをしたりといったことであれば可能です。小さなことでも少しずつ取り組んでいくことで、自分自身の健康を守ることにもつながります。

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