脂の乗ったピンク色の美味しい魚として、国民からの人気も高いサーモン。刺身はもちろん、カルパッチョやムニエルでも美味しく食べられ、日本国内でもトップクラスで人気の魚と言っても過言ではないでしょう。なかでも「アトランティックサーモン」は、スーパーやレストランで多く目にします。
本記事では、サーモンという魚の定義を、トラウトなどと比較しながら解説したのち、アトランティックサーモンという種の特徴や違いを解説しています。最後には、サーモンの安全性に関しても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
アトランティックサーモンとは?生態的な特徴
まずはじめに、アトランティックサーモンとは「タイセイヨウサケ(学名:Salmo salar)」というサケ科サケ目の魚です。
もともとは北大西洋沿岸部の温帯海域から北極の海域にかけて生息している種ですが、ノルウェーでの養殖が開始されてから、周辺のスウェーデンなどでも大規模な養殖が行われるようになりました。
現在はカナダやチリでも大規模な養殖が行われており、日本にも多く流通しています。なお、「サーモンの旬はいつなの?」と疑問に思われる方もいるかと思いますが、結論、旬はありません。安定的な生産が行われており、年間を通じていつでも美味しく食べることができます。
サケとの違いは?サーモンの種類を解説
サーモンやトラウトなど、同じような切り身でも呼び方がたくさんあり、困惑した経験はありませんか?
サーモンについて考える際はまず、
・サーモン(サケ)
・トラウト(マス)
・サーモントラウト
の違いを押さえて行きましょう。
それぞれについて、さっそく解説をしていきます。
①サーモン(サケ)
サーモンは、「サケ」の英名です。アトランティックサーモンもこちらに分類されます。まず、「サケ類」というグループが、太平洋に生息する7種と大西洋に生息する2種、合計9種のサケ科サケ属の魚種で構成されます。市場においては、「海面で漁獲された大型のもの」がサーモン(サケ)とされ、これは海外でも同様です。
②トラウト(マス)
トラウトは「マス」の英名です。上記で解説をした「サケ類」というグループのうち、市場では「内水面で漁獲された小型のもの」をトラウト(マス)と呼びます。代表的なニジマスは、北太平洋7種のうちの1種となります。
③サーモントラウト
サーモントラウトとは、ニジマスを海面(河口域)で養殖したもののことを差します。基本的に、トラウト(マス)は寄生虫の観点で生食に向きませんが、海面で養殖されたサーモントラウトが一度冷凍されたものが解凍され、刺身などで流通しています。
ノルウェーサーモンやチリサーモンとの違いは?
次は、サーモンにも様々な呼び名があるなかで、アトランティックサーモンの特徴を解説していきます。ノルウェーサーモンやチリサーモンなど、サーモンの前に「地名」が入るケースを目にしたことがあるかと思います。
ノルウェーサーモンとは、アトランティックサーモンのブランドの1つです。すなわち、アトランティックサーモンのうち、ノルウェーの環境下で養殖されたものということです。
綺麗なサーモンピンクで、脂が乗った身は大変美味しく、日本でも多く流通しています。同様にチリサーモンとは、チリで生産されたアトランティックサーモンのことです。
おいしいサーモンの食べ方は?
アトランティックサーモンは、スーパーマーケットにて新鮮な状態で販売されています。家庭でもさまざまなレシピで楽しむことができます。
ポイント1:生食から加熱調理まで、幅広に楽しめる
アトランティックサーモンは、美味しい食べ方が多くあります。直接グリルまたはオーブンで焼いて、塩と橙汁などの調味料を加え、焼くのもおすすめです。また、生姜やニンニク、レモンなどの調味料を加えて温め、サーモンを煮込むのもおすすめです。サーモンと野菜を炒め、米と一緒に盛り付け、ピラフにするのも良いでしょう。クリームパスタの具材にするのも、サーモンの風味を堪能できます。
ポイント2:冷凍保存または冷蔵保存で長持ち
サーモンは大きな切り身で販売されていることも多いです。保存する場合は、冷凍または冷蔵で保存し、一定期間鮮度を保てます。
冷凍保存の場合は、新鮮なサーモンを袋(可能であれば密封)に入れて密封し、冷凍庫に入れましょう。最長で3か月間ほど保存することができます。冷蔵の場合は、冷蔵庫にて最長で2日間ほど保存することができます。
アトランティックサーモンの安全性
時に、「サーモンを食べるのは危険」ということを耳にします。様々なケースがあり、意見も別れますが、本記事では2つの観点から安全性について紹介していきます。
まずは、「寄生虫」に関してです。アトランティックサーモンは、養殖下の対策はもちろんのこと、流通時の寄生虫対策として一度冷凍されたものが解凍され流通しています。
そのため、寄生虫の観点では安心して食べることができるでしょう。
また、ノルウェーの「オーロラサーモン」は、ノルウェーの特定の地域で育てられたブランドであり、冷凍されずに流通する点が特徴的です。安全に、かつ現地よりも新鮮なサーモンを食べることができるためオススメです。
特にこだわっているのが育成環境です。ノルウェーでは、いけす内の密度は25kg/㎡という基準が設けられているのですが、オーロラサーモン®はわずか平均9kg/㎡としています。そのため、自然に近い健康的な環境で泳ぎ回れることが可能なのです。また養殖場はフィヨルドの中にあり、水が透き通るほどきれいで、非常に恵まれた環境でサーモンが育つことにより、厳しい酸素濃度、水質、海流、海水温などノルウェー政府の基準はすべてクリアしています。ノルウェー人は「うれしいサーモンはおいしいサーモン」と信じているため、卵の状態から水揚げに至るまで、熟練の生産者の手によってしっかり管理され、大切に育てられています。
日本レロイ
安全性に関し、もう一つ議論に上がるのが「抗生物質や殺虫剤」です。特にチリ産のサーモンに関して話題になることが多く、寄生虫対策として、こうした薬品が養殖下で投与され是非が問われることがあります。日刊スパにより、以下のような記事が過去に公表されました。
「サーモンの細胞組織に損傷を与え、死に至らせる寄生虫『海ジラミ』の対策のため、養殖の全期間を通じて殺虫剤が定期的に投入されているんです」
チリ産の養殖サーモンは“薬漬”って本当か? 現地チリ人の証言「私は食べません」
こうした寄生虫対策のための殺虫剤使用量もチリが突出。サーモン1tあたりの平均使用量で27.92gとノルウェーの5倍以上に達する。
様々な意見があるようですが、現在日本では大手のイオンなどもチリ産のサーモンを販売しており、基本的には水準を満たした安全なサーモンと言えるでしょう。
まとめ
「魚離れ」が問題視されることもある現代ですが、サーモンは唯一国内にて消費量が伸びている魚というデータもあります。アトランティックサーモンをはじめ多くのサーモンが、より安全にそして身近になっています。今後も産業と流通の発展に期待しながら、美味しくいただいていきたいところですね。
【参考文献】
・日本におけるサーモン養殖展開の機序、特徴、 展望(佐野雅昭 2019)