ESG経営は、経営者の方やビジネスパーソンが誰しも一度は聞いたことのあるワードだと思います。サステイナブルな事業戦略は、現代において必須と言っても過言ではなく、簡単な概要は押さえておくべきでしょう!
本記事はなるべく簡潔に、「ESG経営」の意義や事例を解説します。
やや難しい内容ですが、ビジネスパーソンの方、また今後社会人となる大学生の皆さんなどに最適な記事となっているので、ぜひ参考にしてみてください。
ESGとは?基本的な3つの要素を説明
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字から構成されます。
ESGの明確な定義は、やや乱立状態にありますが、各項目の内容は以下の表の通りです。
要素 | 内容 | |
E | Environment(環境) | 事業を展開する上で考えられる環境リスク(二酸化炭素の排出など) |
S | Social(社会) | 多様な社会リスク(雇用機会、従業員モチベーション、人権保護など) |
G | Governance(企業統治) | 企業の管理リスク(取締役会の多様性、積極的な情報開示による透明性など) |
なお、ESGの定義やSDGsとの関係性などは、以下の記事をぜひ参考にしてください。
企業がESGを意識すべき背景
企業がESGを意識すべき背景を、具体的なデータをもとに紹介してきます!
まず、日経ビジネスによる記事にて、以下のような記載がなされています。
投資家に対しESGの活用を提唱する国連PRI。2017年の段階で、署名参加組織の運用総額は約1800兆円に達している。背景にあるのは「世の中のためになる企業に投資する」という倫理的な価値観ではなく、ESGが「長期的な株主価値創出」、つまり運用成績の向上に役立つという実利的な判断だ。
ESG投資とは? 拡大の背景とコロナ後を過去記事から読み解く | 日経ビジネス
*PRI公式サイトはこちらからご覧いただけます
PRIが発足したのが、2015年ですから、大幅に上昇していることが明らかであるとともに、現在もESG投資の市場は拡大していると言えるでしょう。
加えて、SDGsの動きがアクティブになり、消費者側の理解や興味も大きくなっています。
よって、環境・社会・ガバナンスの3要素を加味した経営を行うことが、トレンドとなってきていると言えます。
なお、SDGsに関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
このようにESGを企業が重要視すべき背景を理解いただいたところで、具体的にどのようなメリットがあるかを、次に解説していこうと思います!
企業がESG経営に取り組むことで発生するメリット
ESG経営が、環境・社会・企業の3要素をもとに経営を行うことで、どのような具体的なメリットが生まれるのでしょうか?
本記事では、大きく
・企業としてのブランディング強化
・将来的なキャッシュフローの向上
・経営上のリスク軽減
の、3つの具体例をあげ、解説をしていきたいと思います。
①企業としてのブランディング強化
1つ目のメリットは、「企業としてのブランディング強化」です。
環境問題や、社会課題に取り組む姿勢は、顧客に好印象を与え、ファンとなっていきます。
これは直接的に売り上げの向上に繋がり、身近なアパレル企業や食品関係の企業も多く取り組んでいる様子が見られます。
本記事の後半でも、ESG経営の取り組みとして、具体的な事例を3つ紹介していますので、ぜひ後半を参照ください!
②将来的なキャッシュフローの向上
2つ目は、将来的なキャッシュフローの向上です。
各プロジェクトが社内で進むことで、新しい協業先や顧客層との接点が生まれます。
また環境・社会・企業の3つの観点の取り組みは自社の知識・経験と行った資産も強化することに繋がります。
結果的に、将来的なキャッシュフローの向上に繋げていくことができるというわけです。
③経営上のリスク軽減
3つ目は、経営上のリスク軽減です。
ESGという言葉は、2006年の「PRI(責任投資原則)」の提唱をきっかけに世に知れ渡っていったと言われています。
約10~20年が経過し、ESG経営は一般的な概念となってきました。そしてSDGsという考え方が世界的に重要視され、ESG経営は企業とっていわば「標準」となってきています。
ステークホルダーの視点で、ESG経営に移行していない企業=ネガティブな要素となってくる流れがあり、これは経営上のリスクとなるでしょう。
ゆえに、ESG経営を具体的に自社の運営に反映させていくことは、今後必須のリスク対策となるといえます!
ESG投資とは?7種類の解説
ESG投資とは、これでの企業価値の評価材料だった、財務情報(キャッシュフローや利益率など)に加え、非財務情報であるESG要素も評価材料とするという新しい考え方です。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2016年7月22日、ESGに積極的に取り組む会社を構成銘柄とする新しい株価指数を募集すると発表した。この新しい株価指数を用いてESG投資に乗り出す見込みであり、将来的には数兆円の規模に膨らむ可能性があるという。
経営戦略としてのESG | 日経ビジネス電子版
上記の記事からもわかる通り、国内でもESG投資は大きな市場へと成長しており、今後全てのビジネスパーソンにとって理解必須の項目となっていくでしょう!!
ESG投資は、大きく以下の7種類に分類されます。
1.ネガティブ・スクリーニング
ネガティブスクリーニング(Negative/exclusionary screening)とは、環境問題や社会問題などの観点で、あらかじめ基準を設定し、それを満たさない企業を投資先から除外する手法です。
具体的には、武器、ギャンブル、たばこ、アルコール、原子力発電、ポルノなど倫理的でないと定義される特定セクターが対象となります。
2.ポジティブ(ベスト・イン・クラス)・スクリーニング
ポジティブ・スクリーニングはネガティブ・スクリーニングとは逆に、ESGの環境目や社会面で評価が高い企業に投資をする手法です。
ESG考慮の高い企業は、中長期的に業績が良いという考えに基づいています。
3.国際規範スクリーニング
国際規範スクリーニングとは、ESG分野での国際基準に照らし合わせ、その基準をクリアしていない企業を投資先リストから除外する手法をいいます。
ネガティブスクリーニングとやや類似していますが、基準が国際規範であることが、ネガティブスクリーニングとの明確な違いです。
4.ESGインテグレーション
ESGインテグレーションとは、投資先選定の過程で、これまでに考慮してきた財務情報だけでなく、非財務情報も含めて分析をする手法です。
「総合的に」という部分がこの手法の肝であり、非財務情報はもちろんですが、きちんと収益性も判断されます。
5.サスティナビリティ・テーマ投資
サスティナビリティ・テーマ投資は、サステナブルな企業やプロジェクトに対し投資を行うことを差ます。
具体的には、再生可能エネルギー、テクノロジーを活用した農業、水処理といった領域が有名です。
6.インパクト・コミュニティ投資
インパクト・コミュニティ投資は、リーターンだけを加味せず、社会・環境に貢献し、ポジティブな影響を与える技術やサービスを提供する企業に対して行う投資です。
7.エンゲージメント・議決権行使型
これは、株主として、投資家が投資先企業に対して行う、ESGに関する案件に積極的に働きかける投資手法のことをいいます。
なお、7つの投資それぞれの投資額は以下のようになっています。
こちらは、2016年のGSIRから引用した記事ですが、グラフからは「ネガティブスクリーニング」がもっとも投資額が多いことが見て取れます。
詳細は引用元の資料をぜひご覧ください。
もしも担当になったら?押さえておきたいESG経営の事例
もしも担当になったら、どのようなことから始めるか悩むことがあると思います。
実際に、ESGはビジネス業界のトレンドとなっていると言っても過言ではなく、筆者の調べでは、「ESG」の検索量は右肩上がりに伸びていることが確認できました。(2021年2月現在)
多くのビジネスパーソンが、企業としてESG経営をどのように具体化させていけば良いかを考えるべきシーンに遭遇するでしょう。
本記事では、中でも参考になる3つの事例をピックアップし紹介します!ぜひ、参考にしてみてください。
1、環境への取り組み | キヤノン株式会社
キャノンでは、環境への取り組みとして、
- 製品の省エネルギー設計や工場・オフィスでの使用電力の削減
- 製品のリサイクルや廃棄物の削減
- 持続可能な水資源の利用
- 製品中や生産工程で使用する化学物質の徹底管理
- 世界各地でさまざまな生態系保全活動
などが行われています。
プリンターなどが有名なキャノンでは「紙」を起点に森林保全活動などに注力している様子が見られます。
公式ページ:キヤノンの環境活動
2、社会への取り組み | 株式会社セブン銀行
コンビニエンスストア「セブンイレブン」で有名なセブン&アイHLDGSのグループ会社である株式会社セブン銀行では、社会への取り組みとして
- 「視聴障がい者向けATM「音声ガイダンスサービス」認知向上への取組み
- 電子地域通貨とのATM提携
- 認知症サポーターの育成
- 多言語への対応
- セブン銀行クリック募金
など、地域や多様性を重要視した取り組みが行われています。
公式ページ:ESGへの取り組み
3、ガバナンスへの取り組み | オリックス不動産投資法人
オリックス不動産投資法人は、投資法人ということもあり、徹底的にガバナンス強化を行っている様子が見られます。
- 投資法人のリスク管理・コンプライアンスへの主な取組
- 資産運用会社のリスク管理・コンプライアンスへの主な取組
- 意思決定プロセスの公開
など、金融業界の法人ならではの取り組みが公開されています。
公式ページ:G(Governance)ガバナンスへの取組
なお、以下の記事では関連の強い「SDGsに関する国内企業の事例」をまとめています。ESG経営のヒントが多くある事例なので、ぜひ参考にしてみてください!
まとめ
本記事では、ESGというワードを起点に「ESG経営」に焦点をあてて解説をしてきました。
・ESG投資の市場は拡大している
・ESG経営には、企業としてのブランディング強化、将来的なキャッシュフローの向上、経営上のリスク軽減と言ったメリットがある
・ESG投資という、非財務情報であるESG要素も評価材料とするという新しい考え方がトレンドであり、7つの投資手法がある
上記の3つのポイントを押さえていただき、実業務や将来的な仕事に活用していただけたら幸いです。ESG投資はますますビジネス領域のトレンドとなっていき、教養として知っておくべき項目となっていくでしょう。
企業としても、サステイナブルな経営を行うことは、経済的メリットはもちろん、われわれが生活する地球にとって、優先すべき事柄です。今後の変化にも注目しながら、基本的な部分を押さえた上で生活していけると良いのではないでしょうか!