浮体式洋上風力発電の仕組み・利点・普及状況を解説

「浮体式洋上風力発電」という仕組みを知っていますか?近頃その活用が期待されており、例えば最新のニュースでは、東京ガスが3日、福島県沖で浮体式洋上風力発電の検討を本格化したと発表したことが明らかになりました。

そこで本コラムでは、浮体式洋上風力発電の仕組みや利点、また国内外での普及状況などを解説してまいります!

浮体式洋上風力とは?

浮体式洋上発電は、海に浮かぶ装置を用いて、風力や波力を活用しながら電気を生み出す発電方法です。従来の沿岸部に立てる風力発電や波力発電は、海底に基礎を建設してから風車や発電機を設置するため、建設コストが高く、海底が浅い場所にしか建設できませんでした。

一方、浮体式洋上発電は、浮体を利用して風力発電機や波力発電機を海面に設置することで、海底に基礎を築くことなく深海域でも発電が可能です。また、浮体が風や波の状況に合わせて自由に動くため、安定した発電機の運転が可能でエネルギー効率が高い点も魅力と言えます。

なぜ浮かんでいるの?

浮体式洋上風力発電所は、風力発電機を浮体に取り付け、海上に浮かせて発電するシステムです。通常の洋上風力発電所は、基礎として鋼製の支柱を海底に立て、風力発電機を支柱の上に設置します。しかし、水深の深い海域では、支柱を建てることができず、また、建設・設置コストが高くなることが課題となります。

一方、浮体式洋上風力発電所は、浮体に風力発電機を取り付けることで、海底に支柱を立てる必要がなくなります。このため、水深の深い海域でも設置することができ、建設コストや設置コストが低く抑えられます。また、風力発電機が風の方向に対して自在に向きを変えることができるため、風の力をより効率的に利用することができます。

浮体式洋上風力発電所は、これらの利点により、水深の深い海域での風力発電に適しているとされています。

普及はしているの?

浮体式洋上発電は、現在急速に発展している新しい技術のひとつです。実用化に向けた試作品や商用発電プラントが開発されており、実装割合も徐々に拡大していますが、まだ市場におけるシェアは小さいと言えます。

世界的には、ノルウェー、ポルトガル、フランス、日本、中国、台湾、韓国などが主要な市場とされており、各国政府や民間企業が積極的に浮体式洋上発電技術の開発に取り組んでいます。

また、ヨーロッパでもフランスの「Floatgen」やポルトガルの「WindFloat Atlantic」などの商用プラントが稼働しており、浮体式洋上風力発電技術の実用化が進んでいます。

参考:崎山沖2MW浮体式洋上風力発電所

ただし、浮体式洋上発電はまだ新しい技術であり、海洋環境への対応やメンテナンスなどの課題があります。そのため、技術の発展や市場環境の変化によって、今後の実装割合がどのように変化するかは不透明な部分があります。

浮体式洋上発電の課題は?

浮体式洋上発電においては、海洋環境による影響が大きく、維持管理が重要な課題となっています。以下に、浮体式洋上発電の維持管理に関する課題をいくつか挙げます。

経済的な考慮事項とコストの課題

洋上風雨力発電の経済的な課題には、まず導入コストの高騰が挙げられます。海上の建設や設備固定に伴う費用は陸上よりも高く、これがプロジェクトの魅力を損ねる要因となります。一方で、新技術の導入や効率向上が進むことで、コストの低減が期待されています。特に風力発電のタービンや設置方法の革新が注目され、これが投資回収期間を短縮する可能性を秘めています。

さらに、洋上での気象条件の不確実性は発電量の予測に課題を提起しています。これに対処するためには、高度な予測技術や貯蔵システムの導入が必要です。また、洋上風雨力発電所の維持には適切なインフラ整備が欠かせず、これに伴う運用コストも考慮すべき点です。

最後に、洋上風雨力発電の普及には政府や産業界のサポート政策が不可欠です。助成金や税制優遇などの政策が投資家や事業者を引き寄せ、コストハードルを軽減することが期待されます。これらの経済的な課題に対処することで、洋上風雨力発電が持続可能なエネルギーソリューションとして展開される可能性があります。

腐食や岩盤など自然環境への対応

浮体式洋上発電装置は常に海水にさらされており、その結果、海水中の塩分や湿気が風力発電機、電気設備、鋼構造物などの金属部品に腐食を引き起こし、機器や構造物の寿命を短縮する可能性があります。

一方で、浮体式洋上発電は海底に基礎を建設しない利点がありますが、浮体を固定するアンカーやその他の構造物は海底の岩盤に固定されます。岩盤の地質条件や安定性によっては、アンカーの固定が不十分になる可能性があり、これに対処するためには定期的な点検が必要です。

洋上作業の安全性

浮体式洋上発電の維持管理は、海上作業員による高所作業や機器交換などが必要となるため、安全性に配慮する必要があります。

これらの課題に対しては、定期的な点検やメンテナンス、設備の更新などが必要です。また、防食コーティングの導入や岩盤の地質調査など、事前に対策を施すことも重要です。更に、AIやIoT技術を活用して維持管理を効率化する試みも行われています。浮体式洋上発電の普及には、維持管理技術の進歩が必要不可欠とされています。

現在の浮体式洋上発電の開発状況

続いては、浮体式洋上発電の普及状況を国外・国内ともに以下にまとめました。

世界

世界的な浮体式洋上発電の開発状況としては、北欧を中心に進んでいます。例えば、ノルウェーのスタートアップ企業であるEquinor社が2017年に開設したHywind Scotlandという世界初の浮体式洋上風力発電所があります。この発電所は、浮体型基礎を使って5つの風力タービンを海上に設置し、年間平均で3万戸分の電力を供給しています。また、スペインのIberdrola社も、Equinorと協力して北海に浮体式洋上風力発電所を建設する予定です。

日本

日本でも、研究開発が進んでいます。例えば、2012年に実証実験が行われた「福島浮体式洋上風力発電所実証プロジェクト」では、福島県沖に浮体式風力発電機を設置し、最大で2,000世帯分の電力を供給しました。

参考:https://response.jp/article/2012/03/07/171022.html

また、2019年には、三菱重工業が開発した浮体式洋上風力発電装置「SeaAngel」が三重県尾鷲市の沖合で稼働を開始し、年間で約80世帯分の電力を発電しています。その他にも、日本では、巨大な波力発電装置を搭載した浮体型プラットフォームの実証実験が進んでいます。例えば、三井造船が開発した「フルカワバーク」は、高さ30メートル、直径13メートルの円筒形の浮体に波力発電装置を搭載しています。また、三菱重工業が開発した「ダイアグラム」は、高さ24メートル、直径7.5メートルの円錐形の浮体に波力発電装置を搭載しています。これらの技術は、今後、浮体式洋上発電においても応用されることが期待されています。

参考:三菱重、「海の天使」が狙う巨大発電市場 |日本経済新聞

浮体式洋上発電の市場規模と将来性、2025年までの市場予測

浮体式洋上発電の市場は、急速に成長しており、将来性が高いとされています。Mordor Interlligence社の調査では、以下のように述べられています。

浮体式洋上風力発電市場は、2022年から2027年の予測期間中に、12.5%を超えるCAGRで並外れた成長を遂げると予想されています。

Mordor Intelligence

これは、政府や民間企業が再生可能エネルギーに注力し、浮体式洋上発電に対する需要が高まっていることが要因とされています。

また、浮体式洋上発電の市場は、地域によって発展の度合いに差があります。上述の通り、現在はノルウェー、ポルトガル、フランス、日本、中国、台湾、韓国などが北欧やアジアの国々が主要な市場とされています。これらの地域は、海洋エネルギーに対する政策や支援が進んでいるため、浮体式洋上発電の普及が進んでいます。

なお、浮体式洋上発電の将来性については、需要の増加が見込まれており、技術の進歩によってコストが下がることが期待されています。特に、石油価格の上昇や地球温暖化対策の強化などの影響により、再生可能エネルギーに対する需要が高まっていることから、浮体式洋上発電は今後ますます注目されることが予想されます。

まとめ

浮体式洋上発電は、水深の深い海域でも風力発電が可能であることから、注目されている発電方式です。風力発電機を浮体に取り付けて海上に浮かせ、発電することで、海底に支柱を建設することなく、建設コストを抑えることができます。また、風向きに合わせて風力発電機を自動的に向きを変えることができるため、より効率的に発電することができます。

将来的には、より効率的な浮体式洋上発電システムが普及し、再生可能エネルギーの一つとして世界的に注目を集めることが期待されています。

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