エネルギーミックスは、さまざまな発電方法の組み合わせといえます。発電方法には、それぞれ短所と長所があり、一概にどの発電方法が一番いい、というわけにはいきません。
短所を補い合いつつも長所を伸ばしていくことで、エネルギー事情の改善ができるでしょう。本記事では、エネルギーミックスとは何かということから、日本の現状や今後の課題についても詳しく解説します。
エネルギーミックスとは?
エネルギーミックスとは、「さまざまな方法をうまく組み合わせ、短所を補うことで発電する方法」です。電気を作る方法としては、原子力・水力・風力・火力などさまざまな方法があります。
ただし、エネルギーミックスとはいっても、石油・天然ガスの占める割合が大きいのは変わりありません。2030年になっても石油・天然ガス資源の確保は重要な課題となっています。実際に、2015年に策定されたエネルギーミックスでは、以下の通りになります。
「2015年に策定されたエネルギーミックスでは、2030年においても石油・天然ガスは一次エネルギー供給の約5割を占める見込みであり、エネルギー資源の乏しい我が国において、石油・天然ガスの安定供給の確保は今後も引き続き重要な課題です。再生可能エネルギーの大幅な進展が見られるなど、世界のエネルギー情勢が変革期にある中にあっても、石油・天然ガス権益の確保についてはぶれない取組が必要です。」
2030年のエネルギーミックスの進捗と課題 | 資源エネルギー庁
各発電の特徴
日本で行っている発電には、以下の7つの方法があります。
- 火力
- 風力
- 水力
- 原子力
- バイオマス
- 太陽光
- 地熱
この中でも、とくに火力発電は安定的に大量の発電ができるという特徴があります。ただし、CO2の排出量も多いのがデメリットといえるでしょう。原子力発電もまた、火力発電と同じく大量の電気を安定供給できるものの、安全対策が問題となっています。
水力発電はエネルギー効率が良く、発電時にCO2を排出しないのがメリットですが、ダムの建設などが必要で初期コストがかなり掛かるのが問題です。
風力・太陽光・地熱・バイオマスなどは、CO2の排出もなく、昼夜問わず発電できるのが魅力ではあるものの、導入コストや管理コストがかかりすぎるのが問題となっています。
日本のエネルギー事情
日本のエネルギー事情としては、そのほとんどが化石燃料に頼っているというものになります。もともと資源の乏しい日本は、石油、石炭、LNGといった化石燃料は、輸入に頼らざるを得ません。
そのため、エネルギー自給率の低下が避けられないところです。だというのに、日本のエネルギーは震災後に原子力発電所の稼働が大幅に減ってしまい、さらに化石燃料への依存度が上がってしまいました。
エネルギーミックスが生まれた背景
一つのエネルギー供給だけに頼っていては、いざ何かあったときに対応しきれません。電力の供給も止まってしまい、生活自体が危うくなってしまうでしょう。
そのような事態を防ぐために考えられたのがエネルギーミックスであり、さまざまな電力の供給方法を組み合わせることで、何かあったときにも完全に供給がゼロにならないようにしています。
そんなエネルギーミックスですが、2010年の時点では原発の割合が2.5割あったものを、翌年の原発事故によりわずか0.2割まで落ち込んでしまいました。そのため、再生可能エネルギーに焦点が当てられています。
エネルギーミックスの基本方針「3E+S」
エネルギーミックスの基本方針は、「3E+S」です。エネルギーなら何でもよいというわけではなく、きちんと基本方針が定められています。基本方針は、Energy Security(安定供給)・Economic Efficiency(経済性)・Environment(環境)・SはSafety(安全)です。それぞれどういったことなのかを、詳しく解説します。
①Energy Security(安定供給)
Energy Security(安定供給)とは、エネルギーの持久力を上げるのはいうに及ばず、輸入先を多様化させることも重要です。なぜなら、日本はエネルギー資源のほとんどを海外から輸入しているからです。日本のエネルギー自給率はとても低いため、自給率を上げるための試みもまた、安定供給するためには重要となってきます。
②Economic Efficiency(経済性)
Economic Efficiency(経済性)とは、電気の利用にどれだけかかるかということです。電気は、日々の生活になくてはならないものなので、高すぎては意味がありません。
そのため、発電方法に関しても初期費用が高すぎたり、運用コストがかかりすぎたりしては意味がありません。できるだけ初期投資が安く、なおかつ運用コストがかからない方法がベストです。発電は、経済性を考えなくては、日常的に使うことができなくなってしまいます。
③Environment(環境)
Environment(環境)とは、自然環境への配慮をしなくてはならないということです。たとえば、原発でひとたび事故が起こると、周囲の自然環境が丸ごと汚染されてしまいます。また、火力発電は、CO2の排出が多すぎることが問題です。
CO2が発電のたびに排出されてしまうと、地球温暖化を進めてしまう要因にもなるでしょう。そのため、できるだけ発電時にCO2排出のない風力や水力などの発電方法が望ましいといえます。
④SはSafety(安全)
SはSafety(安全)は、重要です。とくに、原発事故を経験した日本では、より安全性に気を配る必要があります。エネルギーを日々確保できるのも、安全があってのことです。そのため、何よりもまず優先されるのが、Safety(安全)というわけです。
エネルギーミックス実現に向けた取り組み
なお現在は石油や化石燃料を使用した火力発電に多くのエネルギー量を頼っていますが、再生可能エネルギーなどでも賄えるように、さまざまな対策が取られています。ここでは、日本の現状と今後の動向などについて、詳しく解説します。
日本国内における現状
日本国内における現状とは、電力の大半を火力発電に頼っているというものです。もともと依存度は低くはありませんでしたが、2011年の震災と原子力発電所の事故によって、原発の発電量が大きく下がり、その結果化石燃料への依存度がさらに増加してしまったのです。
そのため、今ではほぼ8割近くのエネルギーを、化石燃料に頼っています。多くのエネルギーを賄ってくれるのは良いですが、そのままではエネルギーミックスとはいえません。
現状で化石燃料の輸入が滞るか、化石燃料をもとにしている発電所に何かあれば、日常生活を営むだけの電力を確保することは難しいからです。
輸入ですべて賄うしかない化石燃料への依存が拡大するということは、日本のエネルギーにおける自給率も低下させるということです。そのため、カーボンニュートラルを実施してエネルギー消費量を減らすようにしています。
また、再生可能エネルギーや新しいエネルギーの開発について、日本で自給自足できるエネルギーを模索しています。少しでも化石燃料に頼らないエネルギーを国内で生産することで、いざというときのリスクを分散することができるでしょう。日本でも再生可能エネルギー導入拡大の必要性を感じており、どの程度導入されているかは、環境省の調べでは以下のようになっています。
「世界中で導入が進む再エネも、カーボンニュートラルに欠かせないエネルギーです。加えてエネルギー自給率が低い日本では、再エネの導入拡大はエネルギーの自給率向上にも貢献できます。日本では、FIT制度を導入した結果、再エネ発電設備の導入容量は世界第6位、太陽光発電に限って見ると導入量は世界第3位にまで拡大しました。(ともに2020年実績)。しかし、発電電力量に占める再エネ比率で言えば、2011年度の約10%から2020年度約20%まで拡大したものの、主要国と比べると低い割合となっています。」
2021−日本が抱えているエネルギー問題(後編) | 資源エネルギー庁
今後の動向
日本の今後の動向としては、次世代のエネルギーと目されている「水素とアンモニア」の研究・導入などです。再生可能エネルギーを利用することで、すでに実現されている技術もあり、まだまだこれから発展の望める分野といえます。
そのほかにも、多くの再生可能エネルギーについて研究や導入が進んでいます。経済産業省が出した「第6次エネルギー基本計画」によれば、2030年度には再生可能エネルギーの比率を今の水準よりも大幅に引き上げ、36~38%にすることが記載されています。
現在日本の電力の3/4を賄っている火力発電に関しては、4割程度に抑えることを目標としています。火力発電を減らして再生可能エネルギーで賄うことによって、CO2も大きく削減できるでしょう。
参考:2030年に向けたエネルギーミックスとは?現状と課題をわかりやすく解説 | IDEA FOR GOOD
まとめ
日本は、エネルギー源の多様性を保ちながら、持続可能なエネルギーシステムを実現するために、様々な取り組みを行っています。これらの取り組みにより、日本は再生可能エネルギーの比率を高め、石炭などの使用を減らしながら、持続可能なエネルギーシステムを実現しています。
例えば火力発電は、安定して大量の電気を清算することができ、現在の日本のエネルギーの多くを供給してくれています。しかし、火力発電ばかりに頼ってしまうと、いざ輸入が滞ったときに、電気が使えないという状況に陥ってしまいます。
このようなことに不測の事態に備えて、エネルギーミックス政策を推し進め、再生可能エネルギーを増やしていくことで日本のエネルギー自給率を上げる必要があるでしょう。