物を作り、売る時代から、目に見えないサービスや知識が価値を生む時代へと変わりつつあります。保険、コンサルティング、ITサービス、教育など「無形商材」と呼ばれるサービスは、実はSDGsの目標達成と深く結びついているのです。本記事では、無形商材とSDGsの関係性から、企業の取り組み事例、私たちにできる選択まで幅広くお伝えします。
そもそも無形商材とは?有形商材との違いをおさえよう

「無形商材」という言葉を聞いても、ピンとこない方もいるかもしれません。まずは基本的な定義を確認しながら、有形商材との違いや、なぜ今注目されているのかを見ていきましょう。
無形商材の定義と代表的な種類
無形商材とは、物理的な形を持たない商品やサービスの総称です。目で見たり手で触ったりすることができないため、その価値は「体験」や「知識」「信頼」によって伝えられます。代表的なものとしては、保険・金融商品、コンサルティングサービス、ITソフトウェア(SaaS)、人材紹介・教育サービス、広告・マーケティング支援などが挙げられます。いずれも「人の課題を解決する」という点が共通しており、サービスの質が提供者の信頼と直結するのが大きな特徴です。
有形商材との環境負荷の違い
有形商材は製造・輸送・廃棄のすべての工程で資源を消費しますが、無形商材にはそのプロセスがほとんど存在しません。たとえばソフトウェアはインターネット経由で届けられるため、製造ラインも輸送コストも不要です。コンサルティングサービスも、知識と対話だけで価値を届けられます。もちろんサーバー電力など見えないエネルギーは消費しますが、有形商材と比較すると環境負荷は格段に低く、サステナブルなビジネスモデルになりやすいといえます。
なぜ今、無形商材が注目されているのか
経済のサービス化が加速する中、世界全体で無形商材の需要が急速に高まっています。背景には、デジタル技術の普及とともに、企業や消費者が「モノの所有」よりも「体験や解決策」を求めるようになったことがあります。さらにSDGsやカーボンニュートラルへの対応が社会的義務となる中、環境負荷の低い無形商材は「持続可能な産業」として改めて評価されるようになりました。今後もその流れは加速していくでしょう。
SDGsと無形商材はどこでつながるのか

無形商材とSDGsの関係は、一見すると分かりにくいかもしれません。しかし17の目標を詳しく見ていくと、無形商材の各分野が複数のゴールと深く結びついていることがわかります。
目標8「働きがいも経済成長も」とサービス産業の拡大

SDGs目標8は、すべての人に安定した雇用と働きがいのある仕事を提供することを目指しています。コンサルティングや人材サービスなどの無形商材産業は、製造業に比べて多様な雇用形態を生み出しやすく、性別や年齢に関係なく活躍できる場を提供しやすいことが特性です。また、在庫や設備投資が不要なため、起業や副業のハードルが低く、経済的な自立を支援する役割も担っています。
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」とITサービス

ITサービスやSaaSは、目標9が掲げる「技術革新」の推進役そのものです。中小企業がクラウドサービスを活用することで、大企業と同等のデジタル基盤を低コストで手に入れられるようになりました。これは産業の効率化だけでなく、地域格差や規模格差の縮小にも貢献しています。デジタル化の恩恵をあらゆる事業者に届けるITサービスは、持続可能な産業インフラを支える重要な存在といえます。
目標10「人や国の不平等をなくそう」と金融・保険の役割

保険や金融サービスは、リスクを社会全体で分散させることで、一人ひとりの生活基盤を守ります。病気・災害・失業といった予期せぬ事態が起きたとき、適切な保険や金融の仕組みがあることで、貧困への転落を防ぐことができます。目標10が求める「不平等の是正」において、金融・保険という無形商材は社会的セーフティネットとしての役割を果たしているのです。特にマイクロファイナンスなど、低所得層向けの金融サービス拡充は世界的に注目されています。
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」とコンサルティング

SDGsの17番目の目標は、すべての目標達成を支えるパートナーシップの構築です。コンサルティングサービスは、企業・行政・NPOをつなぐ橋渡し役として、この目標に直接貢献します。SDGs経営の導入支援や、ESG投資へのアドバイス、社会課題解決型ビジネスの立案など、コンサルティングの力は多様なステークホルダーを巻き込んだ変革を可能にします。形のない「知恵」が、社会を動かす原動力となるのです。
業界別・無形商材×SDGsの取り組み事例

実際の企業はどのようにSDGsと無形商材を結びつけているのでしょうか。代表的な4つの業界の取り組み事例を見ていきましょう。
保険業界|リスクを守ることが社会を守ることにつながる
MS&ADインシュアランスグループは、SDGsの17目標すべてと保険業の関わりを分析し、サステナビリティを軸にしたリスクコンサルティングや保険サービスを展開しています。気候変動リスクに対応した保険商品の開発や、作物保険による農業支援など、保険の仕組みそのものがSDGs達成に深く機能しているのです。「リスクを引き受ける」という保険の本質的な役割こそが、社会の持続可能性を支える力といえます。
コンサルティング業界|課題解決のプロが社会変革を支援する
経営コンサルティング会社は近年、SDGs経営の導入支援を重要なサービスとして位置づけるようになりました。環境コンサルティング、人権デューデリジェンス支援、ESG開示のアドバイザリーなど、社会課題に直結したコンサルサービスが急拡大しています。単なる業務効率化ではなく、企業が「社会にとって必要な存在」になるための変革を支援することが、コンサルティング業界の新たな使命です。
IT・SaaS業界|デジタルの力で省資源・効率化を実現する
クラウドサービスやSaaSは、企業がサーバーや機器を個別に所有する必要をなくし、資源の共有化と省エネを実現します。たとえばオンライン会議ツールの普及は、出張や通勤によるCO₂排出量を大幅に削減しました。また、農業IoTや漁業管理システムなど、一次産業の資源管理にもデジタルサービスが活用されており、SDGsの複数の目標達成に横断的に貢献しています。
人材・教育サービス|人を育てることがSDGsの根幹となる
目標4「質の高い教育をみんなに」を直接支えるのが、人材・教育サービスという無形商材です。eラーニングプラットフォームやリスキリング支援サービスは、時間や場所を選ばずに学習機会を提供し、教育格差の縮小に貢献します。また、就労支援や職業訓練といった人材サービスは、目標8の「働きがいのある雇用」の実現にも直結します。人への投資こそが、持続可能な社会の基盤をつくるのです。
無形商材が持つSDGs的な強み

無形商材はその性質上、サステナブルなビジネスと親和性が高いといえます。具体的にどのような強みがあるのかを整理してみましょう。
| 強み | 内容 | 関連するSDGs目標 |
| 在庫・廃棄がない | 製造・輸送・廃棄のコストと資源消費がほぼ不要 | 目標12(つくる責任・つかう責任) |
| カスタマイズ性が高い | 顧客ごとのニーズに柔軟に対応できる | 目標10(不平等をなくそう) |
| 長期的な信頼関係を築きやすい | 継続的な関係が安定した社会基盤をつくる | 目標17(パートナーシップ) |
| 雇用の多様性が生まれやすい | 性別・年齢・場所を問わない働き方が可能 | 目標8(働きがいも経済成長も) |
| デジタル化との親和性が高い | オンライン提供でCO₂削減に貢献できる | 目標13(気候変動に具体的な対策を) |
在庫がない=資源を消費しない
無形商材は製造ラインも保管倉庫も必要としません。商品が売れ残って廃棄されることもなく、過剰生産という概念そのものが存在しないのです。これは「つくる責任・つかう責任」を掲げる目標12の観点から見ると、きわめて理にかなったビジネスモデルといえます。資源を使わずに価値を届けられるという強みは、環境負荷の低減に直接つながっています。
カスタマイズ性が高く、多様なニーズに対応できる
無形商材は、提供する側が柔軟に内容を調整できるため、さまざまな顧客ニーズや社会課題に対応しやすいという特長があります。たとえば保険商品は、農家・中小企業・低所得層など、それぞれの状況に合わせた設計が可能です。コンサルティングも、企業規模や業種に応じてアプローチを変えられます。この柔軟性こそが、社会の多様な課題に寄り添える理由です。
長期的な信頼関係が持続可能なビジネスモデルにつながる
無形商材の営業では、顧客との継続的な関係構築が収益の基盤となります。単発の売り切りではなく、契約継続や追加提案を通じて長期的に関わり続けることが求められるのです。この構造は自然と「顧客の課題を本気で解決しようとする姿勢」を生み出し、社会にとって本当に必要なサービスを磨き続ける原動力になります。信頼の積み重ねが、持続可能な社会を支える力となっていきます。
まとめ

無形商材は、環境負荷が低く、多様なニーズに柔軟に対応できるという点で、SDGsとの親和性がきわめて高いビジネス分野です。保険・コンサルティング・IT・教育といった各業界が、それぞれの形で持続可能な社会の実現に貢献しています。形がないからこそ、届けられる価値がある。私たちが日常で利用するサービスを選ぶ際にも、SDGsへの貢献という視点を持つことが、未来につながる一歩となるでしょう。
参考サイト
·無形商材とは?有形商材との違いを徹底解説!|change inc.
·無形商材の営業とは?おすすめ業界5選とメリット、やりがいを解説|アゲルキャリア
·商社で挑む無形商材営業のやりがいと課題|KOTORA JOURNAL
·持続可能な保険-SDGsに関連して、保険をどのように提供すべきか?|ニッセイ基礎研究所
·サステナビリティに貢献する商品・サービス|MS&ADホールディングス

