本記事では、SDGs達成に向けた取り組みにおける2020年の海外企業ランキングを解説します。後半では、海外事例を重点的に紹介していきますので、ぜひ最後までご覧いただき国内での取り組みの参考にしてみてください。
SDGsとは?企業との関係性
まずはじめに、SDGsと企業の関係性について、簡潔に解説をします。。SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称あり、国連加盟193か国が、2030年までに取り組んでいく17個の目標から構成されています。
2015年9月の国連サミットで採択され、現在世界各国で17個の目標達成に向けて取り組みが行われています。SDGsに関し詳細を知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。
さて、SDGs達成に向けた取り組みに注力することで、企業はどのようなメリットがあるのでしょうか?SDGsと企業の関係性を考える上で、キーワードとなるのが「ESG」というワードです。
ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」をまとめた総称であり、現在企業が持続的に成長するためには、環境・社会・ガバナンスを考慮した取り組みが求められるようになっています。
2018年に投資家が保有する総運用資産のうち、ESG資産が占める割合は地域差があるが、かねてからESGを重視している欧州以外にも、カナダ、オーストラリア/ニュージーランドの保有割合は過半を占める水準にまで到達している
財務省
財務省いよる報告からも認識できるように、ESGの観点で評価に値する企業へ投資する「ESG投資」が全世界でもトレンドとなってきており、SDGsとの関連性の深い分野での取り組みが注目されるようになってきているのです。
世界の企業ランキング「2020 Global 100」とは?
世界の企業ランキングは、「2020 Global 100」というカナダのコーポレートナイツ社(Corporate Knights Inc.)による、世界の上位100社を選出する取り組みによって、毎年公開されています。
コーポレートナイツ社は、世界のあらゆる業界の大企業(2020年は約7,400社)を対象に、環境・社会・ガバナンス(ESG)などの観点から持続可能性を評価し、ランキングを作成しています。
「2020 Global 100」は1月21日~24日にスイスのダボスで開催された「世界経済フォーラム」の年次総会(ダボス会議)にて、発表されました。
*公式ページはこちらからご覧いただけます
ランキングの評価方法
「2020 Global 100」は、大きく以下4つのステップで企業に評価がなされます。
①サステナビリティ情報開示
まずは、サステナビリティ情報の開示の有無によってスクリーニングがされます。具体的には以下のような項目が評価の対象となっています。
- エネルギー生産性
- GHG生産性
- 水生産性
- 廃棄物生産性
- VOC生産性
- NOx生産性
- SOx生産性
- PM生産性
- イノベーション能力
- 税納付
- CEO報酬と従業員平均報酬の比率
- 年金保護
- サプライヤー
- 休業災害(LTI)率
- 事故死者数
- 離職率
- 経営陣の女性比率
- 取締役の女性比率
- 役員報酬制度
- 罰金金額率
- クリーン売上
②財務状況
サステナビリティ情報の開示の有無に関し、ステップをクリアすると、次は財務状況でスクリーニングがなされます。
- 純利益が黒字であること
- 営業キャッシュフローが黒字であること
- (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること
- 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること
- 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと
- 流動比率が高まっていること
- 前年に普通株式発行を行っていないこと
- 粗利益が前年より増加していること
- 総資産回転率が向上していること
上記項目のうち、5つ以上の項目を満たすことが条件となります。
③製品カテゴリー
3つ目のステップとして、製品カテゴリーのスクリーニングが行われます。たばこや武器などの製品カテゴリーを扱う企業がここでふるい落とされることとなります。
④制裁
最後のステップでは、サステナビリティに関する問題で罰金等の制裁を受けていないかがチェックされます。
そして、全てのステップをクリアした企業が、スコアリングを経てランキングに選出される仕組みになっています。
2020年ランキング上位企業
2020年の「2020 Global 100」上位企業は以下の表の通りです。
ランキング | 企業名 | 国 | 事業領域 |
1位 | Orsted A/S | デンマーク | エネルギー |
2位 | Chr. Hansen Holding A/S | デンマーク | 食品・化学物質 |
3位 | Neste Oyj | フィンランド | 石油 |
4位 | Cisco Systems Inc | アメリカ | 通信機器 |
5位 | Autodesk Inc | アメリカ | ソフトウェア |
6位 | Novozymes A/S | デンマーク | 特殊化学物質 |
7位 | ING Groep NV | オランダ | 銀行 |
8位 | Enel SpA | イタリア | 卸売電力 |
9位 | Banco do Brasil SA | ブラジル | 銀行 |
10位 | Algonquin Power & Utilities Corp | カナダ | 電気事業 |
上位10カ国を見てみると、デンマーク企業が3社、アメリカ企業が2社ランクインしています。
10位以降の企業も加味すると欧州の企業が比較的多くランクインしていることが見受けられます。
世界各国のSDGs達成状況は?
「2020 Global 100」ではさまざまな国がランクインしており、比較的欧州の企業のランクインが目立ちました。企業別ランキングの次は、国別のSDGs達成状況を見ていきましょう。
まずはじめに、SDGsの達成状況を評価する上で重要な「Sustainable Development Report 2019」について解説をしていきます。
Sustainable Development Report 2019とは?
Sustainable Development Report 2019とは、SDGs達成のための6つのエントリーポイント(評価基準)が定められているレポートです。大きく以下の6つの項目が、評価基準として定められています。
- 人間の福祉と能力について
- 持続可能でかつ公正な経済について
- 食料システムと栄養のパターンについて
- エネルギーの脱炭素化とエネルギーへの普遍的アクセス方法について
- 都市や都市周辺の開発について
- 地球環境コモンズ(共同利用地のこと)について
参考文献:国際連合 持続可能な開発に関するグローバル・レポート2019
世界各国のSDGs達成状況ランキング
Sustainable Development Reportを元に作成した以下の表は、国別の達成状況をスコア化しランキングにしたものです。
ランキング | 国名 | ランキング | 国名 |
1位 | スウェーデン | 11位 | ベルギー |
2位 | デンマーク | 12位 | スロベニア |
3位 | フィンランド | 13位 | イギリス |
4位 | フランス | 14位 | アイルランド |
5位 | ドイツ | 15位 | スイス |
6位 | ノルウェー | 16位 | ニュージーランド |
7位 | オーストリア | 17位 | 日本 |
8位 | チェコ | 18位 | ベラルーシ |
9位 | オランダ | 19位 | クロアチア |
10位 | エストニア | 20位 | 韓国 |
日本は世界全体で17位のランクインとなりました。
上位国にはやはり、欧州の企業が多くみられ、中でも「サステイナブル推進国」と呼ばれることも多い北欧の国が多くランクインしています。
[adchord]上位国の取り組みを紹介!
世界各国のSDGs達成状況ランキングをみると、上位には北欧国が多く見られました。本記事では、上位国であるデンマーク、スウェーデン、フィンランドの企業の取り組みを具体例として以下に紹介します。
①デンマーク
デンマークはSDGs達成に向けた意識が非常に高い国1つです。
注目される取り組みに「UN17 Village」というプロジェクトがあります。これは、サステイナブルに視点をあてた“村づくり”のような取り組みです。
At the last building plot of Ørestad – named Spidsen – a new housing project will rise over the coming years. A project with a unique approach to sustainability, that will set new standards for sustainable construction. UN17 Village will be the first project ever to implement tangible solutions for all of UN’s 17 sustainable development goals (SDGs) in one building project.
A sustainable village will complete Ørestad to the south
- ビレッジ内は100%再生可能エネルギー
- 屋上にはソーラーパネルを設置
- 150万リットルもの雨水を利用できるシステム
- 多様な生物の生息地となる屋上庭園
このような仕組みが構想されており、完成予定は2023年となっています。今後の進展が非常に楽しみなプロジェクトですね。
②スウェーデン
スウェーデンは、2020年のSDGsランキングで世界1位にランクインしている国家です。
スウェーデンで注目すべき取り組みは「100種類あるゴミの分別」であり、目標11「住み続けられる温もりを」や目標12「つくる責任使う責任」の達成に向けて大きく貢献しています。
スェーデンでは、年間200万トンにのぼる家庭ゴミのうち、およそ99%はリサイクルに利用されていると言われています。
国民の意識が非常に高く、以下のようなルールが社会に浸透しています。
- 環境循環の一部になる
- 「地下」よりも「地上」のエネルギーを選ぶ
- 生物の多様性を保護する
日本が参考にできる工夫も多くあるでしょう。
③フィンランド
フィンランドは、日本よりも若干国土の面積は小さい国です。およそ国土の78%が森林と言われており、住民にとっても自然環境は生活に密に関係していると言えるでしょう。
そんなフィンランドでは、オーバーツーリズムという課題に対し、「レスポンシブルツーリズム」という考え方をもって、自然環境の保護が試みられています。
近年、有名な観光地ではオーバーツーリズムが課題となっている。それに対し、観光地の文化や自然、経済に好影響を与えよう、という考えがレスポンシブルツーリズムだ。フィンランドでは、国と企業が連携して、豊かな自然を守るために、この取組を進めている。
海外に学ぶ日本のSDGs推進 | 公益財団法人地方経済総合研究所
レスポンシブルツーリズムは、行政が企業が連携しながら、また住民にも良い影響をもたらしながら推進しており、行政を軸とした取り組みの推進が高評価の1つの要因と考えられるでしょう。
日本のSDGs達成状況は?
「2020 Global 100」にランクインした日本の企業は、以下の6社でした。
- 積水化学工業
- 武田薬品工業
- コニカミノルタ
- 花王
- パナソニック
- トヨタ自動車
また、これまでの国内企業のランキング状況をみてみると、以下のように推移しています。
・2015年:1社ランクイン
・2016年:4社ランクイン
・2017年:4社ランクイン
・2018年:4社ランクイン
・2019年:8社ランクイン
・2020年:6社ランクイン
2020年のランクインした企業は若干減少したものの、2015年には一社だった状況から複数社がランクインするように推移しており、日本国内の企業のSDGs達成状況のアップデートが今後も期待されます。
まとめ
今回の記事では、2020年SDGs企業ランキングと各国の達成状況を中心に解説をしました。海外企業に置いても、SDGs達成(ESGの観点を中心に)に向けた取り組みが積極的になされていることが見受けられたでしょう。
国内のSDGs企業ランキングについても詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください!