カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量と自然(森林・植林など)による温室効果ガスを吸収する量の均衡を保つための働きです。その点を踏まえて、世界各地や企業などでカーボンニュートラルに取り組む必要があるとされています。この記事では、カーボンニュートラルに取り組む企業や実績、その必要性について解説します。
脱炭素とカーボンニュートラルの違いとは?京都議定書やパリ協定・気候変動サミットの解説も!企業にとって必要性の増す「カーボンニュートラル」
企業にとってカーボンニュートラルを目指すことは、なぜ必要があるのでしょうか。大きな理由として、企業の成長などを中長期的に見据えた上で、環境問題に取り組む点が重要であると考えられ、評価ポイントとなっている点があります。
カーボンニュートラルを目指すことにより、資金調達をする時に継続的で安定性のあるものが重要なため、費用面においても注目されている所以です。社会経済の変革や投資へ促すことから、産業構造の成長が期待できます。
カーボンニュートラルへ取り組む重要性として、経済産業省の報告によれば中小企業の温室効果ガス排出量が、日本全体の1~2割弱を占めているとされています。また、取引先の海外企業から、脱炭素化への動きを求められているという現状もあり、環境問題、経営戦略の双方で検討すべき課題となっているのが実情です。
世界の動向
2020年以降の国際的な枠組みとしてパリ協定が採択されました。このパリ協定は、全ての参加国が合意となった協定で、実効的な温室効果ガス排出量削減の実現に向け重要です。京都議定書に代わった新たな国際枠組みとなり、全ての国で取り組む重要性を改めて可視化できる形となりました。
2021年10月から11月に英国・グラスゴーで開催されたCOP26においては、COP24からの継続議題となっていたパリ協定6条(市場メカニズム)実施指針等の重要議題で合意に至り、パリルールブックが完成しました。また、削減目標の引き上げの重要性に合意するなど大きな成果があがりました。その他にも,二国間や緑の気候基金(GCF)等の多国間のチャネルを通じて積極的な途上国支援を実施しています。
気候変動 -2020年以降の枠組み:パリ協定 | 外務省
パリ協定での採択を受け、。地球の平均気温の上昇を2度以下に抑えるという長期目標を立て、また、1.5℃以下の数値が努力義務として盛り込まれています。主要排出国を含んだ全ての国で削減目標を5年ごとに提出・更新するなど、実施状況を世界全体で把握しながら日々取り組まれています。
日本が行う取り組み
日本では、「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しました。脱炭素社会の実現を目指すための宣言で2020年10月に発表され、長期間の目標を立てることで、温室効果ガス削減目標を目指します。これを踏まえて、2030年における温室効果ガス削減目標は26%から46%へ大きく引き上げられました。
脱炭素の検討も含め、「地球温暖化対策のための税」が導入されています。地球温暖化対策のための税では、石油・天然ガス・石炭といったすべての化石燃料の利用に対し、環境負荷(CO2排出量)に応じて広く公平に負担を求めるといった内容です。エネルギーの利用に伴いCO2排出量の抑制を行うための取り組みで、低炭素社会・脱炭素社会を目指している上で課税という形で取り組んでいます。
カーボンニュートラルに取り組むメリット
カーボンニュートラルに取り組むメリットはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に、以下3点の内容で解説します。
①企業のイメージ向上、認知度UP
環境問題へ取り組むと、企業のイメージ向上や認知度が上がる点がメリットです。企業のホームページやTVなどの広告においても「環境問題に取り組んでいる」という趣旨の内容が見られ、多くの人からの信頼度を得られます。結果的に、ビジネスパートナーや消費者などからの評価に繋がるので、経済戦略という観点も含めて具体的な実施プランを検討しましょう。
②光熱費・燃料費等のコスト削減
環境問題に取り組むことでコスト削減に繋がるメリットもあります。現在、太陽光発電による電力コストの削減への取り組みが注目されており、再生可能エネルギーの導入を検討している企業が多くあります。化石燃料や火力燃料による電力使用を削減することで、直接的に脱炭素社会を実現するという目標に一歩近づけるので再生可能エネルギーの導入の導入がおすすめです。結果として、光熱費や燃料費のコスト削減に繋がります。。
③ESG投資対策
ESG投資は、金融機関・投資家で一般的となっている投資です。具体的には、カーボンニュートラルや環境問題に取り組んでいる企業の成長が見込まれる点で信頼性に繋がります。気候変動に対する対応を経済成長の機会として考えられているため、カーボンニュートラルに取り組むことを踏まえた経営戦略を検討することがおすすめです。
実践事例6選を紹介
日本企業でカーボンニュートラルに取り組んでいる企業を紹介します。今回は、6社の実践事例です。
なお、脱炭素社会に向けた取り組みのひとつとして、RE100への参加があります。RE100は、世界で影響力のある企業が、事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする協働イニシアチブのことです。
RE100とは、世界で影響力のある企業が、事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする協働イニシアチブです。現在は、情報技術から自動車製造までフォーチュン・グローバル500 企業を含む多様な分野から企業が参加し、その売上合計は4 兆5000億米ドルを超えています。企業が結集することで、政策立案者および投資家に対してエネルギー移行を加速させるためのシグナルを送ることを意図しています。日本では2017 年4月より日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が地域パートナーとして、日本企業の参加を支援しています。
RE100 日本企業最新リスト 65社 [2022.2.17改]・脱炭素社会への期待 | 株式会社メンバーズ
RE100へ参加できるのは、グローバル・国内で認知度が高い企業、もしくは電力消費量が多い企業などが対象となります。RE100への参加要件を満たせない場合は、日本独自の取り組みとして「再エネ100宣言 RE Action」となります。再生可能エネルギーを100%利用することの宣言や実践支援を行う枠組みです。RE100に参加することで、ESG投資での評価が高くなる点や将来的な化石燃料高騰のリスク回避ができる点がメリットです。
1.トヨタの取り組み(国内)
トヨタでは、社会・地球の持続可能な発展に貢献を目指して、1960年代から環境問題に対する取り組みを続けています。サステナリビティの方針を全社員と共有した上で、信頼を勝ち取っていくことが目標です。
具体的には、「トヨタ地球環境憲章」を1992年に定めており、2050年までの長期的な取り組みとして「トヨタ環境チャレンジ2050」を推進しています。「トヨタ環境チャレンジ2050」では、次の点を成し遂げることが目標です。
- CO2ゼロ
- プラスの社会
トヨタでは、業界トップクラスのCO2削減に取り組む中で、「エコカーを普及し環境への貢献」をすることに挑戦しています。消費者のニーズに応えた上で、最適な電動車を提供していくことでカーボンニュートラル実現を目指し努力を引き続き行っていくと2021年に発表しました。
2.イオンの取り組み(国内)
イオンでは、地域のお客様と一緒に未来へつながる「より良いくらし」を目指しています。やさしい未来を生み出すということは、サステナブルな社会の実現に直結するとして、具体的には、以下の点について挑戦中です。
- 2025年までに、イオンモール全店舗の使用電力100%を再生可能エネルギーにする。
- 家庭の余剰電力買取り
- 脱炭素型住宅移行の手伝い
上記の点を踏まえて、グループとして「人と地域を豊かにする生活産業」への取り組みを行い、グローバルな事業展開を開始しています。脱炭素社会の実現や生物多様性の保全、資源循環の促進を推進していくことが目標です。
3.セブン&アイ・ホールディングスの取り組み(国内)
セブン&アイ・ホールディングスでは、環境宣言『GREEN CHALLENGE2050』を策定しました。具体的に、カーボンニュートラルの実現をするための取り組みとして、以下の内容を行っています。
- 合計8,821店舗に太陽光発電パネルを設置(2022年2月末時点)
- 年間 約43,000トンのCO2排出量削減を実現(2020年度実績)
- 調光機能付きLED照明の使用
- 地球温暖化への影響が少ない冷媒を利用した冷蔵冷凍設備の導入
CO2排出量削減をテーマとして、グループが一丸となって様々な取り組みを行うことで、より効果を高めていくことが目標です。
4.NIKEの取り組み(海外)
スポーツブランドのナイキでは、独自の規模・基準での戦略としてサステナブルイノベーションの限界に挑戦中です。具体的に、進むべき道として以下の点について取り組んでいます。
- 二酸化炭素排出量ゼロ
- 廃棄物ゼロ
上記を踏まえた上で将来を目指すことが目標です。そのため、ナイキでは「Bloom Over Doom(破滅ではなく繁栄を)」という考えの上で取り組み続けていきます。この目標を達成するため、現在次のことを行っています。
- 使用済みシューズ、アパレルを洗濯して寄付
- 使用済みシューズ、アパレルをリサイクル
- ほぼ未使用品として通常よりも低価格で開封済みのシューズを販売
スポーツウェアショップだからこそ取り組める内容で、真剣に取り組んでいます。
5.パタゴニアの取り組み(海外)
世界的なアパレルブランドであるパタゴニアでは、2025年を目標にカーボンニュートラルを目指しています。目標達成に向けた取り組みは以下の通りです。
- 環境再生型有機農業のコットン畑(インド)
- ソーラー・シェアリング(企業と農家の協業)の拡大
- 再生可能エネルギー生産容量を増やす運動の展開
パタゴニア日本支部では上記のような取り組みを行い、農家が自分の所有地で再生可能エネルギーを生み出す仕組みを作り出しました。結果、再生可能エネルギーの販売により補助収入が得られるなど、農業の発展や産業に貢献しています。
6.イケアの取り組み(海外)
スウェーデンの家具ブランドイケアでは、未来の世代に向けて率先して気候変動への問題に取り組みました。環境問題に対するソリューション開発では、次のような取り組みを行っています。
- ソーラーパネルの設置(935,000枚以上)
- 風力タービンの所有(547基)
- イケア証明商品をLEDベースへ移行(2015年以降)
- LED電球販売数が5億2,300万個(2010年以降)
- クリーンエネルギーサービス提供開始(2025年を目標)
2030年までに再生可能エネルギーの使用率を100%にすることが目標です。結果、誰もが場所を選ばずクリーンエネルギーを使用できるような環境整備を整えていきます。
まとめ
カーボンニュートラルは、世界全体で取り組むべき課題です。持続可能な社会を生み出すためにも、企業をはじめとした組織や一般市民も一緒に向き合っていくことが重要であると言えます。その上で、カーボンニュートラルがどのような取り組みなのかを改めて勉強し、環境問題への意識を高めていきましょう。
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