サステイナブルフードという言葉をよく聞くようになりました。
どのような食品がサステイナブルフードというのか、また、サステイナブルフードが広がることでどのようにSDGsの課題を乗り越えることができるのか、詳しく紹介します。
サステイナブルフードとは
「サステイナブル」という言葉がトレンドになりつつあります。サステイナブルライフという言葉も生まれ、より環境に配慮したライフスタイルを求める人々も出てきました。
その中で特に「食生活」は重要な要素になります。このような流れからビジネスにおいても、サステイナブルフードを取り扱った企業が増えつつあります。
喫茶店大手のコメダ珈琲では大豆ミートのハンバーガーやフェアトレードのコーヒーの販売を開始しました。大手食肉会社も代替肉を使った商品の開発を進めています。
このように、企業のサプライチェーンのマネージメントとして、サステイナブルフードが取り入れられています
「サステイナブルフード」とは、言葉の通り、持続可能な食品という意味です。
自然環境や社会に、できる限り負荷を与えずに作られる食べ物を言います。例えば、有機栽培で作られた野菜や果物、魚では、決められたルールのもと漁獲されたもの(MSC認証)などがそうです。
また、商品ロスを減らした製造ライン、規格外の農産物を使った加工品、野菜の皮などこれまで廃棄されてきたものを活用した加工品などもそうです。
社会に負荷を与えないという面では、発展途上国などで生産された食べ物が適正価格で取引され、経済搾取がおきないように配慮されている食品もサステイナブルフードにあたります。
このような食べ物を生産、選択することで、自然環境や社会に持続可能な循環を生み出すこができます。
サステイナブルフードによって解決すること
サステイナブルフードに取り組むことでSDGsの課題とされている様々な解決への一助となります。
詳しく見ていきましょう。
1、フードロス(食品ロス)
サステイナブルフードはフードロス問題を解決する上で大きな役割を果たします。SDGs目標12で取り上げられているように、フードロスはSDGsの中で最も重要な課題の一つです。
*フードロスについて詳しくは関連記事をご参照ください。
フードロスに関連するサステイナブルフードの取り組みとして、
- 規格外など商品として販売できない生鮮食品の利用
- 売れ残りとして廃棄されるはずだった食品の再利用
- 従来廃棄されてきたような食材(野菜の皮など)の活用
などがあります。
食糧廃棄が減ることにより、処分によって排出される二酸化炭素も削減可能となります。
2、飢餓と食糧不足
食糧不足問題もSDGsの取り組むべき大きな課題となっています(SDGs2の目標)。2020年のFAOの報告では、世界で6億9000万人(世界人口の8.9%)が飢餓状態にあると報告されています。
2050年には人口が100億人になると予測され、さらに深刻な食糧不足が起きるとしています。温暖化による砂漠化や化学肥料などによって耕作できなくなる土地が増加している点も食糧不足に影響を与えています。
さらに2020年からは、COVID-19のパンデミックにより食料供給の混乱が起き、発展途上国や紛争地の国などの飢餓が深刻化しています。
つまりサステイナブルフードに転換することで、飢餓を阻止する助けになります。
3、動物食による環境破壊
牛肉などの動物食は自然環境に大きな負荷を与えています。
特に家畜の飼育は、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量が世界全体の18%を占めているとも言われており、自動車や飛行機などの輸送手段から排出される量を合わせた量を上回っています。
家畜は大量の水と土地も必要としている。牛肉の生産に必要な水は同量の麦の生産に必要な量の約330倍ともいう。現在、家畜の放牧のために地球の全地表の30%が使用され、飼育用穀物の生産に耕作地全体の33%が必要だ。新たな牧草地のための森林伐採が深刻な森林破壊を招き、かつてアマゾンに存在していた熱帯雨林はすでに70%が伐採されている。
ゼロカーボン社会は菜食から? | 地球・人間環境フォーラム
さらに上記で示すように、飼料用の穀物を栽培するためにアマゾンに存在していた熱帯雨林はすでに70%が伐採されています。
サステイナブルフードには食肉による環境負荷を削減するために、植物由来の食品を多く取り入れています。「プラントベースフード」と呼ばれているもので、大豆などで作られる代替肉などがその例です。
4、経済の不平等
グローバリゼーションによって、貧富の格差が広がっています。食べ物の生産性を上げるために、先進国の企業が発展途上国の人々を低賃金で働かせ利益を得る経済搾取が問題となっています。
国同士の経済格差のみならず、国民1人あたりの所得格差も広がり、これが教育を受ける機会などを奪い、未来への持続的な経済開発を阻む要素となっています。
経済的な格差を生むだけでなく、農薬を大量散布するなど、自然環境や人体に多大な影響を与えるような健康の格差も生み出しています。
5、河川や海洋汚染
これまでのような大量消費大量廃棄の食の在り方によって、河川の水質汚染や海洋汚染が起きています。
既に世界の海に存在しているといわれるプラスチックごみは、合計で1億5,000万トン(※1)。そこへ少なくとも年間800万トン(重さにして、ジャンボジェット機5万機相当)が、新たに流入していると推定されています
海洋プラスチック問題について | WWF
サステイナブルフードを取り入れることで、汚染を抑えることができます。
- 有機農法→土壌汚染を防ぐ
- 動物食から植物食に転換→家畜による土壌汚染を減らす
- プラスチックを使わない→プラスチックゴミ(マイクロプラスチックなど)を減らす
例えば、これらの小さな取り組みを積み重ねていくことが重要と言えるでしょう。
日常にサステイナブルを取り入れてみよう
ここからは、サステイナブルフードにはどのようなものがあるか、具体例を紹介します。
サステイナブル・シーフード
サステイナブル・シーフードは明確な定義があり、以下の2つの認証を受けたものを言います。
MSCラベル | 水産資源と環境に配慮した漁業で獲られた天然の水産物 |
ASCラベル | 環境と社会への影響を最小限にして育てられた養殖の水産物 |
ここでは認証を受ける基準については詳しく触れませんが、認証を受けた魚かどうかは、店頭販売されるときのラベルで確認することができます。
サステイナブルレストラン
サステイナブルレストランとは、サステイナブルフードを使った料理や、ウェイストゼロ(ゴミを出さない)などの取り組みを行っているレストランです。
サステイナブルレストラン協会は、サステナビリティに配慮した飲食店やレストランの格付けやキャンペーンを行っている団体です。
サステイナブルレストラン協会公式サイトからサステナビリティレストランのリストが確認できますのて、ぜひチェックしてみてください!
フェアトレード
フェアトレードの食品を選ぶことも大切な取り組みです。フェアトレード商品を選ぶことでサステイナブルな農業と貿易を促進し、持続可能な消費が実現します。
フェアトレードで販売されている商品には「国際フェアトレード認証ラベル」が印刷されています。
主に、コーヒー、紅茶、チョコレート、バナナなどがあげられます。詳細はフェアトレードジャパン公式サイトをご覧ください。
昆虫食
人口増加によって世界のタンパク質不足が懸念されています。その打開策として、昆虫食が今注目されています。
世界には、もともと昆虫を貴重なたんぱく源として食用にしている地域があります。日本にもイナゴやはちのこなど山間部で伝統的に食べられています。
日本国においても、昆虫食の普及に取り組む企業が増えてきているなど、今後の食糧不足に対する取り組みは大きなトレンドと言えるでしょう。
昆虫は家畜類と比べて環境負荷が低く、栄養価も高いサステイナブルフードです。
現在はより食べやすいようクッキーなど加工食品もあり、今後さらに利用されることが期待されています!
サステイナブルフードへの取り組み事例
サステイナブルフードへの取り組みについて、必要性を理解いただけたのではないでしょうか。
次に、各企業はどのような取り組みを行なっているか、具体例とともにみていきましょう!
①スターバックス
スターバックスでは使用されているコーヒー豆のほぼ100%をエシカルな方法(フェアトレードなど)で調達しています。
生産地支援として、生活者サポートセンターやコーヒー豆生産の投資を行っています。
また店頭での取り組みとしては、タンブラーはもちろん、繰り返し利用できるストローやスリーブなどの販売、フェアトレードコーヒーのキャンペーン販売などを行っています。
②マクドナルドのフィレオフィッシュ
マクドナルドのフィレオフィッシュにはMSC認証の天然のスケトウダラが使用されています。
かつてフィレオフィッシュで用いられていたホキがニュージーランドで乱獲され廃棄されていたことがあり、国際的な問題となりました。
マクドナルドではホキの使用が段階的に減らされ、2011年以降ヨーロッパ38か国でMSC認証のスケトウダラに移行しています。日本はヨーロッパに遅れて2019年から使用されるようになりました。
③IKEAのサステイナブル食品
IKEAでは植物性食品(プラントベースドフード)、MSC認証やACF認証を受けたサステイナブル・シーフード、オーガニック食品、サステイナブルな農業システムで作られたコーヒーなどを取り扱っています。
IKEAレストランで最もポピュラーなメニューはミートボールですが、2020年10月には、植物由来100%のプラントボールが発売されました。
これは、従来のIKEAのミートボールに比べ、製造販売過程で排出される二酸化炭素量が約4%まで削減できるとしています。
お肉と変わらない食感と味わいがあるように工夫されています。
まとめ
この記事ではサステイナブルフードについて、詳しく紹介しました。
まとめると、以下のようなことが言えます。
・サステイナブルフードの推進は、フードロスや環境破壊、経済格差の問題など、SDGsの掲げる様々な目標の推進となる
・サステイナブル・シーフードやフェアトレードなど様々なサステイナブルフードの認証システムがある
・企業もサステイナブルフードの推進を行っており、消費者は日常的にサステイナブルフードを選べる可能性が広がってきている
サステイナブルフードを取り入れることは、とても地道ではありますが、着実にSDGsに向けた歩みになります。消費者として私たちもよりよい選択をしてサステイナブルな社会に近づけて参りましょう!